The Witch/魔女
2018年 Part 1. The Subversion
📅 公開日
2018年11月03日
🎬 監督
パク・フンジョン
⏱️ 上映時間
125分
🌏 製作国
韓国
👥 キャスト
キム・ダミ, チョ・ミンス, パク・ヒスン, チェ・ウシク
「梨泰院クラス」「その年、私たちは」等で活躍しているキム・ダミの作品。まず初めにお伝えしておかなくてはいけませんが、私はキム・ダミのファンです。なので、とんでもなく贔屓目で観ています。ファンでないと前半部分で離脱することも予想されますが、何とかこのレビューを思い出して後半まで頑張ってください。後半の展開の早さ&キム・ダミの演技力に心奪われ、目が離せなくなると思います。そう、そして恐らくはキム・ダミのファンになります。
少しバイオレンスがかっていますので、血しぶきなどが苦手な方は目をほそ~くして観てください。
⚠️ 注意:この先のレビューにはネタバレが含まれています。未見の方はご注意ください。映画の展開を知りたくない方は、ネタバレなしのレビューをご覧ください。
あらすじ | 静から動へ、魔女の正体
さて、そんなキム・ダミファンの私が『The Witch/魔女』を初めて観たとき、「やけにのどかだな……?」という印象を抱きました。田舎の牧場暮らし、牛の世話をするジャユン、穏やかな両親の存在感。家族の団らんが心温まる反面、「これ本当にアクション映画なの?」と戸惑うくらい平和なんです。
でも、ジャユンの笑顔の奥には、妙に張りついたような緊張感があるんですよね。その違和感が、オーディション番組への出演を機に一気にあふれ出す。「普通じゃない力」の存在がちらつくと同時に、謎めいた男たちが動き始め、優しく見守っていた家族の世界観はみるみる崩壊していきます。
そして後半、ジャユンの正体が明かされると、前半がまるで”罠”だったかのように、サスペンスもアクションも一気に加速。実は彼女こそが兵器のように育てられた”魔女”だったのだ、という衝撃に、観客としては「あの静かさは何だったの!?」と驚かずにいられません。血しぶきと銃撃が飛び交う怒涛の展開は、前半の落ち着きとは完全に別物。その落差こそが、この映画の最大の魅力の一つだと思います。
キャスト・演技評価 | 主演キム・ダミの魅力
やはり欠かせないのが、キム・ダミの存在感。前半では、どこにでもいる優しげな高校生を自然に演じていながら、時折見せる無表情や硬い笑顔に「何か裏があるんじゃないか」と勘ぐってしまう。そして後半、血清を打たれた瞬間からの豹変ぶりには鳥肌が立ちます。
元々『梨泰院クラス』『その年、私たちは』などでも振り幅の広い演技を見せていましたが、本作では”一人で映画の空気を変えてしまう”ほどのインパクトがあるんです。目の奥に宿る圧と、台詞回しの変化が凄まじく、画面に釘付けになりました。
一方、謎の青年役を演じるチェ・ウシクの怪しさも見逃せません。スマートな見た目と軽妙な口調で近づいてきながら、ちらちらと垣間見える”歪んだ残酷性”が不気味なんですよね。「上品な王子様? それとも凶器?」と、振り幅が大きいキャラクターを自在に操っています。ジャユンとのやり取りで緊迫感が高まるたび、観ているこちらも背筋が凍るような思いでした。
ストーリー分析 | 地味な序盤から爆発する後半へ
正直に言うと、前半は「田舎の家族ドラマ?」と思うくらい地味です。でも、その地味さこそが後半の”ドカン”に繋がるのは間違いありません。私自身、当初は「え、全然アクションらしくないな」と不安でした。
だけど、ジャユンが何気なく放つ無表情や、不自然なほど明るい笑顔に釘付けになっていくうち、「いや、きっとこの子には裏がある」と確信するようになったんです。それが的中するのが、オーディション番組のシーン。あの一瞬、テレビ越しに「あ、この子、普通じゃないんだ」と気づかされ、同時に誰かが彼女を”追いかけて”いる気配が一層強まります。
そして謎の貴公子(チェ・ウシク)が本格的に絡んできたあたりから、映画のムードはサスペンスへ傾き始め、何やらきな臭い研究所の存在も浮かび上がってくる。「この先どうなってしまうんだ?」と身構えていたら、やがてジャユン自身が「最初から全部わかってた」と告白するわけですよ。
その瞬間、私の中ではテンションが爆発し、「え、そっちが真実なの!?」と脳内大混乱。前半の静かな時間が伏線だったことに気づき、嬉しい裏切りを食らったような爽快感に包まれました。
映像・演出 | 対照的な色彩とアクションの美学
前半は暖色系の自然光で映し出される牧場の風景が中心です。ほのぼのした空気感が強い分、後半に入ると青白い研究所の照明が主役になり、血の赤がまるで絵の具でもぶちまけたように鮮烈に映えます。
この落差が、ジャユンの内面や作品全体の”二面性”を引き立てていて、観ている側も「同じ映画とは思えない」と感じるほど雰囲気が変わっていきます。
後半のアクションシーンは、正直言ってえげつないレベルの暴力描写もあるので、苦手な人には少々きついかもしれません。でも、ただのグロでは終わらず、不思議とカタルシスを感じさせる演出になっている。ジャユンが強大な力を解放するとき、「ああ、もう止まらない…」と怖さを感じつつも、どこかスッキリしてしまうのは、演出とカメラワークが上手いからだと思います。
音楽・サウンド | 静寂から轟音への演出効果
序盤はとにかく静かで、牛の足音や風の音、食卓の食器の音など、生活音がやけに耳につきます。それが映画の”平和な顔”を強調しつつ、逆に「本当に何も起きないの?」とハラハラさせる効果もあるんですよね。
一転して後半は、電子音や重低音のBGMが増え、心拍数が上がるような演出に切り替わります。特にジャユンが覚醒するシーンでは、音楽まで圧をかけてきて、映像とサウンドが一体となって「もう逃げられない…」という空気を作り上げているのが印象的です。
総評 | バイオレンスとドラマのバランス
血みどろな描写があるので万人におすすめできるとは言い難いですが、そこに留まらず”守るべきもの”を持った少女の葛藤や、家族というテーマがしっかり描かれているため、単なるバイオレンス映画を超える余韻が残ります。
ジャユンの”守りたいもの”への執着と、”兵器としての宿命”がせめぎ合う中、家族愛がしっかり描かれているからこそ、ただのスプラッター映画には終わりません。そしてやはり、キム・ダミの二面性全開の演技が凄まじい。前半の田舎の優等生が、後半には冷酷な殺人マシンじみたオーラを放ち、でも同時に”人間味”を感じさせる部分も残っている。そのコントラストに、思わず魅了されてしまう人は多いんじゃないでしょうか。
最後に | キム・ダミの魅力とシリーズへの期待
もし前半の地味さで挫折しそうになったら、ぜひ思い出してほしいんです。「これはキム・ダミ主演だ。彼女が本気を出すのは、まだ先なんだ」と。後半には必ず、テンションが最高潮に達するシーンが待っています。
観終わったあと、「あの子、いったい何者なんだろう?」と考え続けてしまうような不思議な余韻も、この映画の魅力の一つ。キム・ダミという女優の振り幅と、作品そのものの大胆な構成が合わさって、ほかにはない体験をさせてくれます。
バイオレンス&サイキックアクションを堪能しながら、一人の少女が”誰かを守るため”に覚悟を決めていく姿を目撃してみてください。最後には不思議な余韻が残って、「この先、ジャユンはどうなるんだろう」と想像が止まらなくなる。そんな魔力を秘めた映画が『The Witch/魔女』だと思います。
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