ドクター・スランプ
2023年 JTBC

Netflix配信中
📅 放送
2023年1月27日〜2023年3月17日
🎬 演出
オ・ヒョンジョン
⏱️ 話数
全16話
🌏 製作国
韓国
👥 キャスト
パク・ヒョンシク, パク・シネ, ユン・バク, チャン・ヘジン
さて今回は2024年に放送された韓国ドラマ『ドクター・スランプ』をレビューします。『美男ですね』で共演して以来、10年ぶりの再会となるパク・ヒョンシクとパク・シネのW主演作なんです。いやぁ~実際に見てみると、予想通りの素晴らしい演技と温かいストーリーに心を打たれました。二人の関係性が少しずつ変化していくさまが丁寧に描かれていて、最終話まで一気に見てしまいましたよ。
本作には医療シーンがそこそこ出てきます。最初は血がドバドバ出てきます。覚悟してください。そこを超えたら後はハートフルな物語が待っていますよ。
⚠️ 注意:この先のレビューにはネタバレが含まれています。未見の方はご注意ください。ドラマの展開を知りたくない方は、ネタバレなしのレビューをご覧ください。
あらすじ | 「人生、休んじゃダメですか?」
このドラマのメインコピーは「人生レースを一旦止めて、心にもCPR(心肺蘇生)が必要なときがある」。美容外科界のスターだったヨ・ジョンウ(パク・ヒョンシク)と、麻酔科の激務に追われているナム・ハヌル(パク・シネ)は、学生時代に成績トップ争いをしていたライバル同士。でも、大人になって再会したころには、ふたりとも”最高のエリート”から”人生どん底”へ転落していたんです。
ジョンウは手術中の不可解な医療事故で訴訟を起こされ、高額賠償まで抱えてしまう。ハヌルは上司からのパワハラや夜勤続きでバーンアウト寸前。「これ以上やっていけない…」とボロボロのふたりが、なぜか同じ屋根部屋(オクタッパン)に住むことになり、互いにぶつかり合いながらも少しずつ心の距離を縮めていく。最初は「前途洋々の医者同士が、たまたま落ちぶれた話?」ぐらいの予想だったんですが、意外と奥深い。コメディ風のスタートに見せかけて、医療事故の陰謀やPTSDなど結構重めの要素が次々に浮上します。
私はあまり事前情報を仕入れずに観はじめ、「あれ、ラブコメだと思ってたけどシリアス多い?」と軽く戸惑いました。でも、そこがこのドラマの強み。笑えるシーンで油断させておいて、後半に急展開。ジョンウの事件の裏には謎めいた動きがうごめいていて、裁判や裏工作まで絡んできて思わず息をのむ。逆にハヌルは体も心もギリギリの状態で、それでも必死に患者を支えようとする。そんなふたりのスランプがリアルに描かれていて、「ああ、このキャラはホントに限界なんだな」と胸が締めつけられるんです。
キャスト・演技評価 | 同窓ライバルから恋へ?
パク・ヒョンシクとパク・シネ、通称”Wパク”共演が10年ぶりということで、そこだけでもワクワク。パク・シネは産休明け復帰作、パク・ヒョンシクは相変わらず”ラブコメ神”の安定感。もう、この二人が絡む場面って、何気ない雑談シーンですらテンポよくてニヤニヤしてしまうんですよね。
特にパク・ヒョンシクの振り幅はすごい。医療事故前のスター外科医としてのキラキラ感と、訴訟後の「社会的に死んだ…」的なドン底感を、あの柔軟な演技力で両立させるから、一気に感情移入してしまう。屋根部屋で髪ボサボサのまま落ち込む姿は「同じ人?」って驚くレベル。パク・シネも、必死で頑張るうちに鬱とバーンアウトを患った麻酔科医という繊細な役を巧みにこなしていて、「笑ってるのに実は泣きそう」という空気をにじませます。
助演陣ではユン・バクが演じる同期医師のビン・デヨンがいい味出してます。最初は三枚目キャラかと思いきや、結局ジョンウを助ける盟友になるあたりが熱い。”友情+ちょいギャグ”のさじ加減が絶妙です。さらにハヌルの母親を演じるチャン・ヘジンが豪快でおおらかな”肝っ玉母ちゃん”なので、重苦しくなりすぎない雰囲気も保たれていました。
ストーリー分析 | コメディから一転、陰謀と裁判
前半は「屋根部屋に同居する犬猿の仲カップルが、わちゃわちゃ口ゲンカしながら距離を縮める」みたいなテイストで、ほのぼの要素も多い。でも後半に入ると、ジョンウの医療事故が「ただのトラブル」じゃないかもしれないと判明し、どんどんサスペンスが加速していきます。スリル満点の裁判シーンや追っ手から逃げる場面は、ラブコメというより”医療ミステリー”に近い雰囲気ですね。
「え? そこまでしちゃう?」という派手な事故や急展開もあるので、現実味を求めすぎるとちょっと驚くかもしれません。でも勢いとテンポがあるので、「ま、いっか!」と気にならなくなるんですよ。私は逆に「このぐらいバラエティ豊かなほうが面白いかも!?」と開き直って観てました。気楽に構えていたら、いつの間にか物語にハマってましたね。
映像・演出 | 陽だまりの屋根部屋 VS 冷たい手術室
演出面では、屋根部屋や下町のほのぼの風景と、病院の真っ白な空間とのギャップが際立ってます。カットごとに色味がガラッと変わるから、「ここはコメディゾーン」「ここはシリアスゾーン」って自然に切り替わるんですよ。屋根部屋で焼酎片手に夜風を浴びるヒョンシクの表情なんかはすごく柔らかいのに、直後には訴訟とかPTSDで追い詰められてる姿が映って「あ、やっぱり医療ドラマだった…」と我に返る。そのテンションの変化もこの作品の魅力だと思います。
音楽・サウンド | K-POPアーティストたちのOSTで盛り上げ
音楽はとにかく豪華。甘いラブソングから切ないバラードまで豊富に揃っていて、ドラマの世界観をしっかり支えてくれます。ジョンウ(パク・ヒョンシク)がハヌルのために行動を決意する場面で、やさしいメロディがふっと流れると、もう一気にジーン…ときます。機械音が主体の医局と静かなピアノ曲の対比も、ただの恋愛ドラマ以上のものを感じさせてくれました。
総評 | ゆるいけど深い、笑って泣ける”再生”ドラマ
実は私は、冒頭10分くらいは「スランプ医師たちが同居してケンカするだけ?」と軽く流し見してたんです。でも回を重ねるうちに、「あ、これ意外とシリアスじゃん…」となり、いつの間にか画面に釘付け。医療事故の裏にある闇や、登場人物たちが抱えている鬱やトラウマがちゃんと描かれているおかげで、物語にグッと厚みが出ています。パク・シネのバーンアウト描写もリアルだし、パク・ヒョンシク演じるジョンウの苦悩シーンは見てるだけで苦しくなるほど。でもそれだけじゃなく、やっぱり”隣で支えてくれる誰か”がいる心強さも同時に感じられるんですよね。ゆるい笑いがありながらも、人間関係の温かさがしっかり伝わってきます。
ハヌルとジョンウは、お互いを助け合いながら少しずつ立ち直っていくんですけど、その過程が本当にじんわり来るんですよ。「完全大逆転でハッピー!」というよりは、スランプを経て強くなる姿が丁寧に描かれていて、「人生って何度でも仕切り直しができるんだな」って気づかせてくれます。
最後に | CPRが必要なのは心だけじゃない
仕事でも勉強でも、全力疾走していると誰だって息切れする瞬間がありますよね。そんなとき、ちょっと立ち止まって「私、何のために頑張ってたんだっけ?」と考えるのって意外と大事。彼らがどん底状態から復活していくドラマの流れは、まさに”心のCPR”だなと思いました。ちょっと大げさな展開も含めて、観終わったころには「よし、明日もがんばろうかな」とエネルギーがチャージされるんです。
ラブコメ要素でキュンキュンしたい人、共感できるスランプ話が好きな人、あるいはシリアスな事件モノを適度に楽しみたい人――どれでも当てはまったなら、ぜひこの『ドクター・スランプ』をチェックしてみてください。まったく違う道を歩んでいた二人が、同じ屋根部屋で再会し、人生を立て直す物語。それって実は、自分たちにも起こりうる”もうひとつのスタート”かもしれません。辛いなと思ったときに思い出すと、ちょっと元気をもらえる作品でした。
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